「All The Things You Areを弾いてみたいけれど、転調が多くて何を弾けばよいか分からない」
「コードごとにスケールを変えようとすると、フレーズが途中で止まってしまう」
「コードトーンやオルタードを覚えたけれど、実際の曲でどう使えばよいか分からない」
このように感じていませんか?
All The Things You Areは、ジャズセッションでも演奏されることが多い定番曲です。
曲の中でキーが次々と変わるため、ジャズギター初心者の方には難しく感じやすい曲でもあります。
しかし、細かいコードをすべて同じように追いかけるのではなく、
- キーのまとまりで大きく考える
- コードトーンでコード感を出す
- ドミナントコードでオルタードを使う
- 解決先のコードトーンへ着地する
という順番で整理すると、アドリブしやすくなります。
今回は、All The Things You Areのコード進行に対して、考え方の異なる2種類のギターアドリブサンプルを制作しました。
今回解説する2種類のサンプル
1つ目は、メジャースケールを中心にキーチェンジを少なくして弾く方法です。
2つ目は、コードトーンを中心に、ドミナントコードでオルタードフレーズを使う方法です。
同じコード進行でも、音の選び方を変えるとフレーズの印象や自由度が大きく変わります。
この記事では、曲のコード分析を簡単に確認したあと、制作した譜面と演奏サンプルをもとに、各セクションで何を考えて弾いたのかを詳しく解説します。
All The Things You Areのコード進行を簡単に確認
All The Things You Areは、一般的な譜面では36小節で構成されています。
この記事では、曲を次の4つのセクションに分けて考えます。
| セクション | 小節 | 主なキーの流れ |
|---|---|---|
| Aセクション | 1〜8小節 | A♭メジャー → Cメジャー |
| Bセクション | 9〜16小節 | E♭メジャー → Gメジャー |
| Cセクション | 17〜24小節 | Gメジャー → Eメジャー → A♭メジャー |
| Dセクション | 25〜36小節 | A♭メジャーを中心に進行 |
転調が多く見えますが、各セクションにはii-V-Iやドミナントからの解決など、ジャズでよく使われる進行が含まれています。
最初からコードネームをすべて暗記するよりも、
A♭ → C
E♭ → G
G → E → A♭
最後はA♭へ戻る
という大きな流れを覚えると整理しやすくなります。
Aセクションのコード進行

Aセクションの代表的な進行は、次のようになります。
Fm7 → B♭m7 → E♭7 → A♭maj7
D♭maj7 → Dm7♭5 → G7 → Cmaj7
最初の5小節はA♭メジャーを中心に進みます。
その後、
Dm7♭5 → G7 → Cmaj7
と進み、Cメジャーへ解決します。
D♭maj7からDm7♭5への動きは、ルートがD♭からDへ半音上がります。
ギターで演奏するときも、コードやフレーズを大きく移動させるのではなく、近い音へ接続すると滑らかになります。
BセクションはAセクションを移調した形

Bセクションは、Aセクションと同じようなコード進行を別のキーへ移した構造です。
Aセクション:A♭メジャー → Cメジャー
Bセクション:E♭メジャー → Gメジャー
そのため、Aセクションで使ったフレーズやリズムを移調して使うことができます。
毎回まったく違うフレーズを作るのではなく、1つのアイデアを別のキーへ移すことも、ジャズアドリブでは重要です。
Cセクションのコード進行

Cセクション前半は、Gメジャーのii-V-Iです。
Am7 → D7 → Gmaj7
続いて、Eメジャーへ向かう進行が登場します。
F♯m7♭5 → B7 → Emaj7
最後のC7は、次のFm7へ向かうドミナントとして考えられます。
C7 → Fm7
Fm7はA♭メジャーの中に含まれるため、この部分から次のA♭メジャーを意識することができます。
Dセクションの特徴的なコード

DセクションはA♭メジャーを中心に進みますが、D♭m7やBdim7など、少し特徴的なコードが登場します。
D♭m7
D♭m7は、A♭メジャーに対するIVm7として考えられます。
A♭メジャーの中に、同主短調であるA♭マイナーの響きを取り入れたコードです。
このような考え方を、モーダルインターチェンジと呼びます。
Bdim7
Bdim7は、次のB♭m7へ向かうパッシングディミニッシュとして考えられます。
ディミニッシュコードは、次のコードへ半音で接続する場面でよく使われます。
実演例1|メジャースケール中心で簡単にアドリブする
最初に解説するのは、メジャースケールを中心に演奏したアドリブサンプルです。
この方法の目的は、コードが変わるたびにスケールを細かく切り替えるのではなく、キーのまとまりを大きく捉えることです。
キーチェンジの回数を減らすことで、
- 演奏中に余裕が生まれる
- リズムや音色に集中できる
- 音を長く伸ばしやすい
- 小節線を越えたフレーズを作りやすい
- コードチェンジに追われにくい
というメリットがあります。
Aセクション|A♭メジャースケールを長く使う

通常の分析では、Aセクションの最初の5小節をA♭メジャー、後半をCメジャーとして考えます。
しかし、今回のサンプルでは、6小節目のG7までA♭メジャースケールを使っています。
G7でA♭メジャースケールを使う理由
A♭メジャースケールの音をGから見ると、次のようなテンションが含まれます。
- A♭:♭9
- B♭:♯9
- D♭:♭5または♯11
- E♭:♭13
これらは、G7に対して強い緊張感を作る音です。
そのため、G7でA♭メジャースケールを弾き続けると、結果としてオルタード的なサウンドになります。
A♭メジャースケールを弾く
↓
G7でオルタード的な緊張感が生まれる
↓
Cmaj7へ解決する
G7になった瞬間に、新しいスケールポジションへ切り替える必要がないため、演奏をシンプルにできます。
ただし、A♭メジャースケールを機械的に上下するだけではなく、Cmaj7への解決を意識することが重要です。
Bセクション|Aセクションの考え方を移調する

Bセクションは、Aセクションと同じようなコード進行をE♭のキーへ移した形です。
そのため、今回のサンプルでは、
- 前半:E♭メジャースケール
- 後半:Gメジャースケール
として演奏しています。
Aセクションで使ったフレーズやリズムを、そのままE♭メジャーへ移す練習も効果的です。
同じフレーズを移調すると、少ないアイデアでも複数のキーに対応できるようになります。
Cセクション|解決先を意識してスケールを選ぶ

Cセクション前半の、
Am7 → D7 → Gmaj7
では、Gメジャースケールを中心に演奏します。
続く、
F♯m7♭5 → B7 → Emaj7
では、EマイナーからEメジャーへ解決する流れとして考えています。
今回のサンプルでは、
F♯m7♭5・B7:Eマイナーを意識
Emaj7:Eメジャー
という切り替えをしています。
C7では次のA♭メジャーを先取りする
Cセクション最後のC7は、次のFm7へ向かうドミナントです。
Fm7はA♭メジャーの中に含まれるため、今回のサンプルではC7からA♭メジャースケールを使っています。
つまり、今鳴っているC7だけを見るのではなく、次に進むFm7とA♭メジャーを先に意識しています。
このように、解決先から逆算してスケールを選ぶと、セクションをまたいだ長いフレーズを作りやすくなります。
Dセクション|A♭メジャーとA♭マイナーを切り替える

Dセクションの最初の部分は、Aセクションと同じようなコード進行なので、A♭メジャースケールを中心に演奏します。
D♭m7ではA♭マイナースケール
D♭m7はモーダルインターチェンジによるIVm7なので、この部分ではA♭マイナースケールへ切り替えています。
その後、Cm7でA♭メジャーへ戻るため、再びA♭メジャースケールを使います。
A♭メジャー
↓
D♭m7でA♭マイナー
↓
Cm7からA♭メジャーへ戻る
Bdim7だけはコードトーンを使う
Bdim7では、メジャースケールだけで自然に演奏することが難しかったため、このコードだけコードトーンを使用しています。
Bdim7の構成音は、
B・D・F・A♭
です。
すべてをメジャースケールだけで弾こうとせず、特徴的なコードだけコードトーンへ切り替えることで、演奏を整理できます。
メジャースケール中心の方法で身につくこと
この方法を練習すると、コードを細かく追う演奏とは違った感覚が身につきます。
特に、
- 音を長く伸ばす
- 小節線を越えて弾く
- フレーズを大きくまとめる
- リズムに変化をつける
- コードチェンジに追われずに演奏する
という練習に効果的です。
コードトーンを追える方も、あえてメジャースケール中心で演奏すると、今までとは違うフレーズが生まれやすくなります。
All The Things You Areのアドリブで悩んでいる方へ
曲の分析を理解しても、実際の演奏でどの音を選べばよいか迷うことがあります。
特に、
- 転調するたびにフレーズが止まる
- コードごとにスケールを考えて余裕がなくなる
- 譜面どおりには弾けても、自分のフレーズを作れない
- 小節線を越えた演奏ができない
という悩みは多いです。
横山貢介ギター教室では、今回のような制作譜面と演奏サンプルを使いながら、スケールの選び方、フレーズの作り方、リズム、コードトーンへの着地まで実践的にレッスンしています。
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実演例2|コードトーン+オルタードでアドリブする
次に、コードトーンとオルタードフレーズを中心に演奏したサンプルを解説します。
今回の考え方は非常にシンプルです。
基本はコードトーン
↓
ドミナントコードでオルタード
↓
次のコードトーンへ解決
メジャースケール中心の方法よりも、コード進行の動きやジャズらしい緊張と解決を表現しやすくなります。
Aセクション|E♭7とG7でオルタードを使う

Aセクションでは、基本的にコードトーンを使って演奏しています。
オルタードフレーズを使っている主な場所は、
- E♭7
- Dm7♭5→G7のG7
です。
その他のコードでは、コードトーンを中心にしています。
コードの変わり目を近い音でつなぐ
コードトーンを使うときは、コードが変わるたびに別の場所へ大きく移動するのではなく、現在の音から近い次のコードトーンへ接続します。
たとえば、現在のコードの7度から、次のコードの3度へ半音または全音で移動します。
このようなつなぎ方を意識すると、コード進行を表現しながらフレーズを滑らかにできます。
コードトーンの基礎となるmaj7・m7・7th・m7♭5の違いから確認したい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
Bセクション|同じ音列でもリズムを変える

Bセクションでは、
Am7♭5 → D7
のD7でオルタードフレーズを使用しています。
その他のコードではコードトーンを中心に演奏しています。
今回のサンプルでは、同じような音列を、
- 1拍目:4分音符
- 2拍目:3連符
として演奏しています。
音数や音の並びを大きく変えなくても、リズムを変えるだけでフレーズの印象は変わります。
フレーズのボキャブラリーを増やすときは、音を増やすだけでなく、
- 音の長さを変える
- 休符を入れる
- 3連符へ変える
- 裏拍から始める
といった練習も効果的です。
Cセクション|D7とB7でオルタードを使う

Cセクションでは、D7とB7でオルタードフレーズを使っています。
D7では低い音から上行する

D7では、オルタードフレーズを低い音から高い音へ向かって演奏しています。
フレーズの方向をはっきりさせることで、次のGmaj7へ向かう流れを作りやすくなります。
B7では繰り返しパターンを使う
B7では、短いオルタードフレーズを繰り返し、Emaj7へ解決しています。
B7で緊張感を作る
↓
Emaj7のコードトーンへ解決する
オルタードフレーズそのものを弾くことよりも、どの音に解決するかが重要です。
Emaj7の3度、5度、7度などへ着地すると、コードが変わったことをはっきり聞かせられます。
Dセクション|E♭7でオルタードを使う
Dセクションでも、基本はコードトーンで演奏しています。
E♭7ではオルタードフレーズを使い、A♭maj7へ解決します。
今回のサンプルでは、E♭7のフレーズでも、
- 1拍目を4分音符
- 2拍目を3連符
として、音列を大きく変えずにリズムの印象を変えています。
最終段のE♭7でも、オルタードフレーズを使っています。
その他の部分はコードトーンが中心です。
コードトーン+オルタードで身につくこと
この方法では、
- コード進行をフレーズで表現する
- 3度と7度をつなぐ
- オルタードから解決する
- ドミナントコードの緊張感を出す
- 近い音でボイスリーディングする
- リズムを変えてフレーズを展開する
という練習ができます。
コードトーンだけでは単調に感じる場合も、重要なドミナントコードでオルタードを加えると、演奏にメリハリが生まれます。
2種類のアドリブ方法を比較
今回制作した2種類のフレーズには、それぞれ違った目的があります。
| 演奏方法 | 特徴 | 向いている練習 |
|---|---|---|
| メジャースケール中心 | キーを大きく捉えて長いフレーズを作りやすい | リズム、音の長さ、小節線を越える演奏 |
| コードトーン+オルタード | コード感と緊張・解決を表現しやすい | ボイスリーディング、解決感、ジャズ語法 |
どちらか一方だけが正しいわけではありません。
実際のアドリブでは、2つを組み合わせるのがおすすめです。
大きな流れはメジャースケール
↓
コードの変わり目でコードトーン
↓
ドミナントでオルタード
↓
解決先のコードトーンへ着地
これにより、フレーズの自由さとコード感を両立できます。
All The Things You Areのおすすめ練習手順
ステップ1:コード進行を確認する
まずはコード伴奏を弾き、A・B・C・D各セクションのキーの流れを確認します。
この段階では、アドリブを弾かなくても構いません。
コード伴奏を少ない動きで弾きたい方は、3ノートボイシングの記事もあわせてご覧ください。
ステップ2:メジャースケール版の譜面を弾く
制作したメジャースケール中心のフレーズを、譜面どおりにゆっくり弾きます。
どこでスケールを切り替えているかを確認しましょう。
ステップ3:同じ音でリズムを変える
譜面どおりに弾けたら、音は変えずにリズムを変えます。
休符を入れたり、音を伸ばしたり、3連符へ変えたりしてみてください。
ステップ4:コードトーンだけで弾く
各コードのルート、3度、5度、7度だけで短いフレーズを作ります。
コードが変わる場所では、近い音へ移動します。
ステップ5:オルタード部分を取り出す
E♭7、G7、D7、B7などのオルタードフレーズだけを取り出して練習します。
必ず次のコードトーンまで含めて練習しましょう。
ステップ6:2種類の考え方を混ぜる
最初の4小節はメジャースケール中心、次の4小節はコードトーン中心、というように交互に演奏します。
慣れてきたら、1つのフレーズの中で両方を組み合わせます。
ステップ7:伴奏に合わせて1コーラス演奏する
iReal ProやYouTubeなどの伴奏を使い、曲を止めずに1コーラス演奏します。
途中で間違えても止まらず、次のセクションから復帰する練習も大切です。
スケールを覚えるだけではアドリブにならない
メジャースケールやオルタードスケールを覚えることは大切です。
しかし、スケールを順番に上下するだけでは、音楽的なアドリブにはなりにくいです。
今回の2種類のサンプルでも、
- 音を長く伸ばす
- 休符を入れる
- 3連符を使う
- 小節線を越える
- コードトーンへ解決する
- 同じ音列のリズムを変える
といった要素を意識しています。
スケール練習をしているのにアドリブへつながらない方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
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まとめ|2種類のアドリブ方法を使い分けよう
今回は、All The Things You Areに対して制作した2種類のギターアドリブサンプルを解説しました。
1つ目は、メジャースケールを中心に、キーチェンジを少なくして演奏する方法です。
この方法では、
- 長いフレーズを作る
- 小節線を越える
- 音を長く伸ばす
- リズムやニュアンスに集中する
という練習ができます。
2つ目は、コードトーンを中心に、ドミナントコードでオルタードを使う方法です。
この方法では、
- コード感を出す
- 近い音でコードをつなぐ
- 緊張と解決を表現する
- ジャズらしいフレーズを作る
という練習ができます。
実際のアドリブでは、どちらか一方だけを使う必要はありません。
大きな流れはメジャースケールで捉え、重要なコードではコードトーンやオルタードを加えることで、自由さとコード感を両立できます。
まずは制作した2種類の譜面をゆっくり弾き比べ、それぞれの考え方と響きの違いを確認してみてください。
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